
現在の資料、特にIAQに関するホワイトペーパーを見ると、ひとつの明確な事実が浮かび上がる。
世界共通の統一された室内空気質(IAQ)基準は、いまだ存在していない。
各国・各組織でガイドラインや基準が大きく異なり、その結果、政府、システムインテグレーター、建築主、そして一般社会は、明確で行動可能な指標を持てずにいる。
しかし、より本質的な問いは「基準が不足していること」ではない。
なぜ私たちは、空気を“守る”ために、これほど多くの基準や装置に依存するようになったのか。
問題の根本は、室内空間ではなく、人類の自然環境そのものにある。
資源を過剰に消費し、必要以上にエネルギーと物質を使い続けることで、自然環境は破壊され、屋外の空気が汚染される。その結果として、室内空気質の悪化が避けられなくなる。
そして私たちは、その“結果”に対処するため、さらに多くの基準、機器、システムを生み出すことになる。
別の視点から見れば、現在のIAQ基準やソリューションの一部は、商業的目的と強く結びついていることも否定できない。
センサー、空気清浄機、高度なHVAC機器の大量生産は、資源、エネルギー、そして製品ライフサイクル全体での環境負荷を伴う。
慎重に扱わなければ、「健康を守るための技術」が、結果的に環境破壊を助長するという矛盾を生む可能性がある。
もちろん、IAQ基準そのものが誤りというわけではない。
特に弱い立場の人々を守り、社会の認識を高めるために、基準は必要である。
しかし、基準はあくまで手段であり、目的ではない。
真の目的は、自然と調和した暮らし方に立ち返ることだ。
足るを知り、不要な消費を減らし、資源を尊重し、自然換気、緑化、持続可能な設計を優先する。
環境が守られていれば、空気の清浄さは管理対象ではなく、当たり前の前提となる。
結局のところ、環境を愛することは、センサーや基準から始まるのではない。
それは一人ひとりの意識と選択から始まる。
環境が守られたとき、空気の質は技術競争の対象ではなく、
**「お金で買うものではない、自然からの贈り物」**として本来の姿を取り戻すだろう。

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