はじめに
世界中でエネルギー基準がますます厳しくなる中、建築家は多様な課題に対応する必要があります。
最初のステップは、初期段階からの分析と多分野との連携のために、重要な指標を理解することです。
建築物は世界のCO2排出量の39%を占めており、設計業界はデータに基づくエネルギー効率の統合へと進化しています。
この変化は、建築家が建物性能の専門家としての役割を担うようになり、高効率かつ健康的な空間の創出を可能にします。
以下は、すべての建築家が知っておくべき持続可能な建築設計における重要な5つの指標です。

1. エネルギー使用強度(EUI - kBtu/ft²/年)
EUIは、建物の運用に必要な年間エネルギー消費量を示します。
統合的な設計によって、運用コストとメンテナンスコストを削減し、空気の質、温熱快適性、自然採光の向上が期待できます。
エネルギーシミュレーションを行う際は、設計上のあらゆる決定がEUIにどう影響するかを理解することが重要です。
建物構造、窓の割合、受動的・能動的手法、空調負荷などがEUIに大きく関与します。
EUIは「年間エネルギー消費量 ÷ 床面積」で算出され、単位はkBtu/ft²/年です。
EUIを理解・予測することで、年間のエネルギーコストを見積もることができます。主な構成要素は暖房、冷房、照明、機器、ファン、ポンプ、給湯です。

2. 日照計画 – sDAとASE
sDA(空間的昼光自律性):作業面(床から76cm)において、年間の勤務時間(8時~18時)の50%以上にわたり、300ルクス以上の自然光が得られる床面積の割合を示します。
ASE(年間日射曝露):年間250時間以上にわたり、直射日光で1000ルクスを超える床面積の割合。過度な日射はグレアや冷房負荷の増加を招く可能性があります。
効果的な自然採光設計には、建物形状、材料、内装の色(天井、壁、床)、庇・ルーバー・反射棚などの日射遮蔽装置、隣接建物や植栽などの外的要素も関係します。

3. カーボン排出量(CO2eトン/年)– 埋め込みカーボンと運用カーボン
埋め込みカーボン(Embodied Carbon):材料のライフサイクル全体(採掘、製造、輸送、設置、交換、解体、処理)で発生するGHG排出量。
運用カーボン(Operational Carbon):建物の運用・維持管理におけるGHG排出(空調、照明などのエネルギー使用を含む)。
設計初期段階で評価を行えば、埋め込みカーボンを最大80%削減可能です。
パリ協定の目標を達成するには、建築からの排出削減が不可欠です。

4. 屋内水使用強度(WUI - gal/ft²/年)
WUIは、1平方フィートあたりの年間飲料水消費量を示します。
飲料水使用は地球全体の淡水資源の大部分を占めるため、水利用の効率化は極めて重要です。
主な対策は以下の通り:

  • 屋根雨水の貯留

  • 雨水・雑排水の再利用

  • 高効率の衛生器具(LEED WaterSense規格)

  • 雨水の浸透処理による地下水還元戦略
    WUIは、5つの代表的な給水器具の基準値と目標値に床面積を掛け合わせて予測・算出されます。

5. 視界の質(良好な視界を持つ面積の割合)
屋内利用者にとって有益な外部視界が確保されているかを評価します。
設計時に考慮すべき点:

  • 建物の方位

  • 敷地計画

  • ファサードデザイン

  • 内部レイアウト
    自然の見える視界を持つ利用者は、満足度や集中力、生産性が高まる傾向があります。
    医療施設では、自然の視界が治癒時間の短縮、ストレスやうつ症状の軽減、鎮痛薬の使用削減に貢献します。
    また、外部視界は自然な概日リズムの維持にも役立ち、これが乱れると精神障害を含む健康リスクが増す可能性があります。

結論
EUI、sDAとASE、カーボン排出、WUI、視界の質という5つの指標を理解し活用することで、建築家は高性能で環境に優しく、かつ利用者の健康と快適性を両立させた建物を実現できます。

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